5S活動から現場活動に発展させるヒント集です

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1人で学ぶ
ものづくり品質を楽に楽しく向上させる方法
【1】 品質を向上するQC活動とは
1.品質とは?
「品質」に関してはJISやISOに難しい定義がありますが、私はお客様が商品を買って下さるパスポートであると考えています。パスポートがないとどこにも行けないのと同じで、誰も買ってくれません。今では信じられませんが、戦後の日本製品は「安かろう、悪かろう」の代名詞だったそうです。1950年にアメリカよりデミング博士をお招きして、品質向上のための統計的方法による品質管理を学びはじめました。1962年には、品質管理を実践する小集団活動として「QCサークル」が誕生しました。これが、QC活動のはじまりです。その後も継続的に品質活動を真剣に取り組んだ結果、日本企業が世界有数の品質を確保できるようになったのです。今ではメイド・イン・ジャパンそのものが、高い品質を保証しているように感じます。実に素晴らしいことですが、一朝一夕でできたのではないのです。

その品質向上には、QCサークルを代表とするQC活動が、大きな役割を果たしたと考えています。品質向上の実現には、最終工程での厳しい検査や、さらにダブル検査を行う手段もあります。しかし、多くの不良が発生する可能性があり、経営的には有効ではありません。QCサークルは全員活動として実施するため、全ての工程で品質の作り込みを行うことが可能です。そのため不良そのものを発生しないようにできたため、日本企業の国際競争力を高めたといえます。

2.QC活動とは?
QC活動とは、QC(品質管理)に関わる活動のことを指します。QC活動の推進は、QCサークルという小グループを結成して行うことが一般的になっています。自然発生的にできたのではなく、日本科学技術連盟(日科技連)の継続的・組織的な活動によるものなのです。日科技連では、1962年に現場における品質管理の普及を目的とした雑誌『現場とQC』(現在の『QCサークル』)を発行し、QCサークルの育成に尽力されました。日本での品質管理の歴史を示します。

日本での品質管理の歴史をまとめると以下のようになります。

1950年 アメリカのデミング博士が来日「品質管理セミナー」を開催
1951年 デミング賞が創設
1954年 アメリカのジュラン氏が来日し品質管理の実践方法を紹介
1950年~ QCサークル活動
1975年~ TQC(Total Quality Control:全社的品質管理)の導入
1990年~ ISOの導入
1996年~ TQM(Total Quality Management:総合的品質管理)に展開

日科技連のQCサークルがすごいのは、全国に支部をつくりQCサークルを増やす活動を行いながら、本部で推進方法や評価基準を制定し、ぶれない活動を展開したことです。そして、それぞれのQCサークルの活動のレベルがはっきり分かるために、QCサークル大会を開催したのです。支部のQCサークル大会で勝ち抜いたサークルが全国大会で競い合うことができ、モチベーションの大きな向上を実現しました。さらに、すごいのは製造業の製造部門だけでなく、生産会社の事務部門・営業部門・技術部門などに広げ、その後も事務・販売・サービスの企業・部門や医療・福祉施設にも広く普及させたことです。今では海外にも広く展開しています。

私が勤務していた企業でも、QCサークルが活発に行われていました。製造現場のメンバーのパワーポイントによるプレゼンテーションは、本当に素晴らしいものでした。アニメーションを随所に活用し、発表時間もぴったりで、かなりの熱意と時間をかけて練習したのが伝わってきました。その高いモチベーションに好感を持ちました。でも、経営成果も上げたとの報告を聞くのですが、その工場から重大な品質問題が発生しているのが気がかりなこともありました。QC活動が現場では有効に機能しているか、私はささやかな疑問を持ちました。

退職後、中小企業に接する機会が多いのですが、QCサークルの言葉をほとんど耳にしないのです。どうしてなのでしょうか? どうすれば、中小企業でもQCサークルが活用できるのでしょうか? いくつかの中小企業の経営者に問うと、「やりたいけど、できない」との回答が返ってきました。どうやら、QCサークルを実施するには、かなり大きなパワーが必要なためのようです。

私の推測ですが、多くの企業に早く浸透させるために最初から推進方法を標準化したことが、反対に小規模事業所の参加を阻んでいるように感じます。QCサークルの運営には多くのルールがあり、それを理解しないと円滑に推進できないのです。QC部門だけが推進できる手法だったので、ある程度の規模のQC部門が存在しないとQCサークルの導入が難しいのです。推進方法の標準化を徹底して行ってきたため、標準以外の進め方が許されない雰囲気も感じました。評価された活動はとても素晴らしいことですが、大きな変化の時代に適応できるのか疑問を持ったのです。

3.QC活動の目的・メリット
QC活動の目的と活動内容を考えてみましょう。実際に、このメリットによって、日本が品質大国にまで成長できたのです。単に製品の不良率を下げるだけでなく、良品だけをしっかりと生産できる工程の確立に大きく貢献したのです。さらに、QCサークル活動を通して、従業員のモチベーションを向上するという従業員満足度まで目指しているのは素晴らしい活動であると感じます。

QC活動の目的と活動内容
・品質第一の製品を生産する
・顧客満足度(CS)と従業員満足度(ES)を向上させる
・品質を維持するための生産工程の管理や改善を行う
・品質だけでなく納期やコストなどの問題を解決するための改善方法を見出す

一方、私がサポートしていたIE部門には、残念ながらIEサークルはありませんでした。プロジェクトの報告会などで発表することはあっても、他の工場のメンバーと一緒に発表する機会はほとんどないのです。そのため、IE的な現場改善活動が、なかなか定着しないのです。在職中、私はQCサークルの活動がとてもうらやましく思っていたぐらいです。

変化の大きな現代では、QCサークルをはじめとする小集団活動は、さらに活動の成果が期待されていると考えています。今後、どうすれば良いのでしょうか?

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