5S活動から現場活動に発展させるヒント集です

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1人で学ぶ
ものづくり品質を楽に楽しく向上させる方法
【4】QCサークルの現状
1.QCサークルの効果
日本では多くの会社がQCサークル活動をしており、品質、コスト、納期などでもすぐれた成果をあげています。それは、日科技連の継続的な努力によるところが大きいと感じます。QC教育は年々充実し、日科技連や各社主催の各種品質管理セミナーが開かれ、全国で毎年、多くのQCサークル大会が開かれています。製造業だけでなく建設業、銀行、病院、ホテル、レストラン等にも広くQCサークルが浸透しています。

QCサークルとは、第一線の職場で働く人々が継続的に製品・サービス・仕事などの質の管理・改善を行う小グループを指します。小集団活動の代表的な形だといえます。この小グループは、運営を自主的に行いQC7つ道具などのQCの考え方・手法などを活用し、創造性を発揮しつつ自己啓発・相互啓発をはかり活動を進めています。その活動は、QCサークルメンバーの能力向上・自己実現、明るく活力に満ちた生きがいのある職場づくり、お客様満足の向上、社会貢献を目指すものです。

日科技連は「進化したQCサークル活動」の検討を進め、その目指すべき姿として次の3点を掲げました。
1)個の価値を高め、感動を共有する活動
2)業務一体の活動の中で、自己実現をはかる活動
3)形式にとらわれない、幅広い部門で活用される活動
まだ日本の製造業が拡大期にあり業務最優先だった時代であり、極めて斬新で柔軟な方針であったと感じます。現場のメンバーは自己実現の楽しさを感じながら、品質向上を実現していったのです。

このような絶えざる教育のつみ上げによってQCサークルが育ち、そのQCサークルが毎年わずかずつでも改善成果をつみ上げていったのです。はじめからうまくいったのではなく、ほとんどのサークルでは、参加率の悪さやマンネリ化などで悩み、リーダーを中心に大変な苦労をする中で、それを乗り越えることにより一歩ずつ力をつけ育ってきたのです。今でも、色々な苦労を経験しながら、それを克服した時の喜びを求めて活動が続けられています。継続することが、大きな力になることを体験の中で学んだのです。異なった作業服を着用しているのに気がつくと思いますが、製造業とサービス業の異業種交流に応用した事例です。

2.QCサークル活動の進め方
QCサークルの大きな目的の一つは、明るく楽しくやりがいのある職場をつくることです。雰囲気の良くない職場では、コミュニケーションも悪く、品質や能率が低下しがちです。職場で勤務する者は生活時間の大半を職場で過ごすため、明るく人生を過ごすためにも職場が楽しく明るいものでなければなりません。そのためには、職場の全員が心を一つにして活動することが重要なのです。

実際にQCサークル活動をはじめるためのポイントを示します。
1)同じ職場内の人たちで、サークルを作ることが基本です。同じ職場の人たちであれば、同じ目的を持って意志結集することがやりやすく、結果としてその職場を明るく楽しいものにするのに役立つためです。
2)サークルメンバーは、3~10人位までが進めやすいです。あまりに多すぎると1人ずつ意見を述べても何時間もかかったり、発言しない人が増えたりします。人数の多い職場では、いくつかのグループに分けてQCサークルを編成するのが有効です。メンバーの中から、QCサークルリーダーを選出します。
3)活動のスタート時期は、メンバーが気楽に発言できる場をつくるために、自由な話題で話し合うのが望ましいです。
4)QCサークルとはどんなものかを、メンバーで勉強し興味を持つようにすることが重要です。
5)その雰囲気ができたらメンバーで身近な共通の問題を探し、テーマと目標を決めます。

QCサークルリーダーとして望ましい人とは、積極的で責任感があり、メンバーに対してリーダーシップのとれる人が望ましいです。テーマの設定の際には、あまりむずかしいテーマでなく、メンバーの力で2~3ヶ月のサイクルでPDCAを回せる程度のものであり、メンバーが関心をもって分担しながら取組めるテーマが望ましいです。具体的には、自分の職場で困っている身近な問題、つまり、職場を明るく仕事しやすいものにするテーマが良いでしょう。たとえば、品質問題をはじめとして、仕事がやりにくい・疲れる、時間がかかって困る、仕事の結果に対して何か不安が残るというようなテーマです。

テーマ検討は、メンバーに自由に発言してもらいホワイトボードなどに書き出して、メンバーで見ながら連想式に案を出しあうというブレーンストーミングを活用するのが効果的です。できるだけ多くのテーマ案を出した上で、メンバーの最も関心の高いものを絞り込んでいくようにします。また、テーマを確定する前に、上司やスタッフにも相談して意見をもらっておくことも重要です。確定したらQCサークル活動計画書にまとめ上司に連絡します。

3.QCサークル活用のポイント
工場内や社内で複数のQCサークルで進められている場合、QCサークル活動体験談発表会が開催されることが、QCサークル活動の大きな特徴だといえます。一般的にQCサークル活動体験談発表会はQCサークル大会と呼ばれています。発表することには、次の点で大きな意味があります。
1)QCサークル活動を工場や会社の多くの従業員に知ってもらうことにより、その存在が認められ、やる気がうまれる
2)発表という明確な目的のために、メンバー全員が協力する場が作られ発表後の達成感が得られる
3)大勢の前で発表するという新たな経験によって全員が色々なことを体験し、スキルアップになる
4)他サークルの発表を聞くことにより多くの気づきを得ることができ、QCサークル活動の高位平準化につながる

工場や社内のQCサークル大会で優秀な成績を収めたQCサークルを、多くの企業は日科技連主催の地域のQCサークル大会に出場させています。そこで勝ち残ると、さらにQCサークル全国大会、そして、国際QCサークル大会と大きな大会に出場することができます。毎年、開催場所が変わる全国大会や国際大会に参加できることだけでも、QCサークルメンバーのモチベーションアップにつながります。さらにそれらの大きな大会で入賞できれば、素晴らしい名誉となります。

日科技連が指導されているQCサークル大会の素晴らしい点は、評価基準を明確にしておりQCサークルの発表が終わった後、すみやかに評価を行って入賞サークルを決定し、表彰する点であると思います。そのため、各QCサークルの発表は、色々と工夫され、力を込めた発表が行われていると感じます。

残念なことに今世紀に入るとモノづくり環境の大きな変化から、QCサークル活動が低迷しているように感じます。バブル崩壊後の価値観の多様化によるモノづくりの多品種少量化、さらに、変種変量生産が大きな要因であると考えています。QCサークル活動の際に活用するQC7つ道具が大量生産向きであり、少量生産ではなかなか成果を出ししにくいことも影響していると思います。

しかし、QCサークルを代表とする小集団活動は極めて有効であるため、現在の状況に適した推進方法を見出すことが重要だと考えています。活動が難しくなっている原因の一つに、QCサークル大会を目指している点があると思います。特に中小企業がQCサークル大会入賞を目指すのは、大きな負担となっているようです。そこで小集団活動に徹して、QCをはじめとして5Sやムダを価値に変える現場改善活動を推進することが有効であると考えています。定期的に社内やいくつかの中小企業が集まって、小集団活動の活動報告ができる場を持つことはさらに有効です。成果報告ではなく、ノウハウの共有化を目指す報告会にすることが重要です。これらの活動を継続的に行うことにより、現場力の高位平準化が実現できると考えています。もちろん、余裕ができれば、どんどんQCサークル大会を目指すことも可能です。

どうすれば、有効な小集団活動を推進することができるのでしょうか。少しでも少ないパワーで、小集団活動を推進できることが重要なのです。

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