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【12】稼働率と可動率 
機械を使ってものをつくっている割合を示す数字には、稼動率、稼働率、可動率があります。
よく使っているのは稼動率でしょう。
稼動時間に対して機械を動かして生産を行った時間の割合を指します。

例えば、稼動時間が10時間で機械で生産していた時間が8時間だと80%になります。
生産を行わずに機械を動かしていた時間、空運転は含まれません。
単に機械が生産のため動かしていた時間なので、速度を落としていても、稼動率は同じになります。
当然、生産数は少なくなります。

稼動率はごまかすことができ、例えば、生産計画が1時間分しかなければ、稼動時間1時間に対して稼動率を算出します。
すると、90%などと良い数字になるのですが、生産数は1時間分だけなのです。
この問題を解決するために、稼動時間を一律、24時間で算出している工場もあります。

24時間で算出すると、勤務時間が短い日は40%などのように低い数字になります。
生産計画や勤務体制で稼動率は大きく変化するのです。
稼働率では、機械の状態が良いのか悪いのか分からないのです。

もう一つの問題は、稼動率を指標にして目標を設定すると、つくりすぎのムダが発生してしまいます。
機械を停めると稼動率が下がるので、機械を停めないように先の生産計画の分まで生産するようになります。
気がつけば、まだ先の計画の仕掛品や製品の山のようになっていたということが発生します。

TPSでは、可動率ではなく稼働率という数字を使います。
稼働率は、その機械の最大の能力に対して機械を動かして生産した割合を指します。
つまり、この機械は1時間に100台の加工能力があるのに、80個の生産であれば80%になります。

稼働率は、月々の販売状況や生産台数で変化する数字であるとTPSでは考えられています。
売れゆきが悪くなると稼働率は下がるし、販売が調子よければ残業や交替制勤務で130%なんて数字にもなります。
つまり、稼働率を目標にはしにくいのです。

実際、工場見学をしても、動いていない機械が目に付くのです。
TPSでは、生産すべき時に生産できれば良いという考え方なのです。
そのため、もう一つの「可動率」を重視しているのです。
読むと同じなので、稼働率と区別するため、「べきどうりつ」とTPSでは呼ぶことが多いです。

可動率とは、機械を動かしたい時に、正常に動いていくれる状態の割合を指します。
したがって、可動率は常に100%が理想であり目標にしているのです。
その実現のためには、予防保全をしっかりと行い、機械の故障を予防することが重要になります。

自動車に乗ろうとする時に、ちゃんと自動車が動いてくれないと大いに困ります。
そのため、ちゃんと車検を受け、ガソリンを入れ、定期的にオイルを交換しています。
しっかりと、検査と予防保全を行っているのです。

ジャストインタイムを実現するために、必要な時に機械が動いてくれることが非常に重要です。
TPSでは、機械の稼動時間を長くすることではなく、必要な時にしっかり動くことを重視しているのです。
そのために、しっかりとしたメンテナンス計画を立て、保全部隊で予防保全を行っています。
言いかえると、保全によってもたらされる設備の信頼性を示す数字でもあります。

さらに、機械を停める要因は機械の故障(ドカ停、チョコ停)だけではありません。
切替時間、メンテナンス時間、清掃時間など色々とあります。
このロス時間も最短にする必要があります。

多品種少量生産の時代なので、可動率や稼働率ではなく「可動率」を重視すべきです。
     
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