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心に響く言葉「私の改善 感動物語」楽々改善ストリート6
第1話 ワクワク 改善人生はじまる

1998年、私の勤務する会社に現場改善を専門とする部署ができました。
それまでは、生産技術として工場で生産する設備の設計を行っていました。
機械や電気設計、組立、そして、生産管理のメンバー8名が集められました。

当時、暇だったのか、その組織の変わるように指示が出ました。
これが、20年にわたることになる私の改善人生のはじまりでした。
入社18年目、ちょうど40歳の時です。

生産設備を製作する部門でしたが、上司より設備は作ってはいけないと言われました。
いったい何をするの? という感じでした。
8名で色々と悩み、たくさんの本を調べ、社外の研修にも行きました。

設計ではベテランになっていたので、あまり勉強もしなくても大丈夫だったのですが、現場改善は全くの素人です。
当時、現場改善については本当に勉強しました。
40歳になったばかりだったので、「四十の手習い」と、呼んでいました。
そして、工場に行って、学んだことを恐る恐るやりだしたのです。
 
第2話 現場改善を学ぶ

社内に大きな研修センターがあり、色々な研修が行われていましたが、当時、現場改善の講座はありませんでした。
そのため、社外の研修を調べました。
東京に、改革道場という研修があることを知り、受講することにしました。

私の会社から受講するのは初めてで、所属長に決裁をもらいにいくと、「大変らしいぞ」と脅かされました。
参加してみると、確かに大変でした。
ホテルに缶詰め状態の2泊3日の道場ですが、講師は1泊3日だと言い切っていました。

夜もグループでディスカッションがありチャートをまとめ、部屋に戻ると本を読んで感想文を書く宿題があるというハードさです。
寝不足で受講するのですが、不思議なことに、眠くならないスゴイ研修でした。

何よりもショックだったのは、講義の中で小テストがあるのですが、隣に座っていた28歳の受講者の半分も点数が取れなかったことだったのです。
つまり、現場改善に関しては全く知識もノウハウもなかったのです。
私の勤務していた会社自体が、設備投資を行って合理化することしか知らなかったのです。

入社以来、最大のショックだったことを鮮明に記憶しています。
その道場で、現場改善のアウトラインを理解することができ、それから、多くの書籍で手法について学びました。

会社生活のちょうど半分のところで、カツが入ったのです。
今でも、とても良いショックを受けたと感謝しています。
第3話 現場改善スタート

最初に現場改善を行ったのは、三重県にあった電源工場でした。
主力製品の海外展開により多品種少量生産になったため、コンベアラインでの生産が厳しくなっていました。
30分かけて品種切替を行い、生産は5分で終了するといった感じです。
一日中、品種切替を行っているのです。

工場より要請を受けて、コンベアラインを調査し、ラインメンバーと一緒に改善案を考えました。
コンベアには10名程度の人員がいましたので、少ないメンバーで生産でき、品種切替が短時間でできることが望まれました。

そこで、セル生産ラインを導入することにしました。
道場で学んだ方法で、3名で生産できると工場に提案しました。
3名での作業手順を時間設計し、それに必要なU字型のラインをまとめました。

現状ラインの冶具や計測器は使えるので、ほとんど投資は不要でした。
製品がシンプルだったので、トラブルなく生産をスタートすることができました。
作業を行っていた女性がとても優秀で、1ヶ月で生産性が1.6倍になったのです。

工場にも好評だったので、2ライン以降の提案を行いました。
ここで、予想もしないNOの回答が返ってきたのです。
残念に思っていたのですが、半年ほどして工場を訪問すると、全てのラインがセル生産ラインになっていたのです。
シンプルな構成なので、自分たちで作ったようです。

しかし、これがとんでもない結果になったのです。
工場で作ったセル生産ラインがうまく稼働せず、生産がダウンしてしまったのです。
私たちに再要請する訳にもいかず、半年ほどで、全て元のコンベアラインに戻してしまいました。

その後、その原因を分析しました。電源固有の問題が潜んでいたのです。
電源は部品点数が3倍近く変動するのです。
そのため、同じセル生産ラインでは生産ができないのです。
一気に、同じラインを増設したために、生産するモデルによってバランスが崩れ、生産がダウンしたのです。

今まで生産設備を導入すると、そこそこ生産ができたのですが、セル生産ラインのような管理技術で構築するラインは、時間設計ができていないとダメであることが分かったのです。
IE(インダストリアルエンジニアリング)などの管理技術のスゴさを認識した瞬間でした。
第4話 次のテーマがない

最初のテーマが、あまりにも早く終わってしまったので、次のテーマがなくなってしまいました。
でも、意識の高い人が社内におられました。
シンガポールへの長期赴任を終えて国内のスピーカ工場に戻り、工場長に就任された方でした。
その方の依頼を受け、現場改善が必要なのかという調査からスタートすることになりました。

三重県にその工場がありましたが、工場長のご苦労が分かりました。
私がその工場を訪問しても、ほとんど誰も対応してくれないのです。
何とか、同じ業務を担当している生産技術のメンバーが窓口になってくれました。

製造現場では、「何が問題なのか?」という冷ややかな顔で迎えてくれました。
スピーカは、その当時でも半世紀の歴史のある工場で、現場の皆さんが自信をもっていたのです。
昔の大量生産の時代には、改善活動をどんどん行い生産性を向上させ、大きな利益を上げていたのです。

しかし、主力製品が中国やインドネシア、メキシコに展開してしまい、国内には大ロットの製品は皆無になっていたのです。
生産性を極限まで上げたコンベアラインを使って、小ロットの生産を行っていました。

さすがは、気合の入った現場でした。
コンベアに20名ものベテラン作業者がおられるのですが、素晴らしいチームワークで品種切り替えを行いながら生産を行っていました。
しかし、限界を超していたのです。そこに、工場長は気がつかれたようです。

何しろ、8時間勤務の間に10回以上もの切り替えを行っていたのです。
15分程度かけて切り替えを行い、生産はほんの数分という神業を行っていたのです。
生産時間の半分以上が切り替え時間に取られてしまっていたのです。
何とかしなければ…
真剣に、どうすれば良いのか考えはじめたのです。
第5話 20名を3名で生産できるライン

三重県の工場で、小ロット生産が出来るラインの検討をスタートしました。
小ロット生産に適したセル生産方式では、電源のラインで失敗しているので、かなり慎重になっていました。
悩んでいても仕方ないので、まずは目標を決めることが必要だと判断して、現状20名で生産しているラインを3名で生産できるようにしたいと工場に提案しました。

それを聞いて、工場の人たちには激震が走りました。
絶対に出来ないと言われました。
長年の生産実績と継続的な改善の経験より、出来ないと判断されたようです。
すると、私たちの受け入れをしてくれていた生産技術のメンバーまでも、相手にしなくなりました。

現状の生産状態を知りたいと思っても、誰も対応してくれないので、頼み込んで生産技術の若いメンバーを担当にしてもらい、データを提供してもらいました。
色々と計算すると、開発するセル生産ラインを4ラインで同じ数だけ生産するためには、サイクルタイム(製品1個の生産時間)は30秒であることが分かりました。
これで目標が決まり、ライン設計をスタートしました。

セル生産ラインは、最初に目標のサイクルタイムで生産できるように時間設計を行います。
標準作業組合せ票という帳票を使って時間設計を行うのですが、なかなか目標が実現できなかったのです。
結局100枚以上の標準作業組合せ票を作成することにより、目標が達成できそうなことが分かりました。

当時は、あまり認識していなかったのですが、後から学んだ「動作経済の原則」や「改善4原則」を使って作業改善していました。
たぶん私の改善経験の中で、一番、じっくり考えたと思います。
色々と考えることにより、自然に、改善の原則を活用していたのです。

改善は、何とかしたいという気持ちと、色々と試行錯誤しながら考えれば、答えを見出すことができるのだと自信を持ちました。
いよいよ、セル生産ラインの設備設計をスタートしました。
第6話 うまく進みだすと寄ってくる

小ロット生産に適したセル生産ラインの設備設計を専門部隊に依頼しました。
さすがは設計集団で、良いハードを作ってくれました。
でも、今まで経験した設備と全く違っていました。

各々のユニットは動くのですが、この設備だけでは、全く生産が出来ないのです。
作業者と設備がうまく連動する必要があったのです。
時間設計は出来ていましたが、作業者にとっては全くはじめての経験でした。

私も、それほどの経験はないのですが、映画監督のように作業の手順を説明しながら、生産の確認を行いました。
さすがは、ベテランの製造担当者です。
3日もするとコツをつかんで何とか生産できるようになってきました。

製品一つを生産する時間をサイクルタイムといいます。
目標のサイクルタイムを設定しますが、その段階では目標の2倍以上もかかっていました。
作業者の熟練で少しずつ速くなりますが、根本的な問題を解決しないと目標達成はできません。

ここで役にたったのが、ストップウォッチです。
目標時間を達成していない動作には、何か問題点があるのです。
それを、一つずつ解決していくのです。

残念ながら、時間設計にも問題点が見つかりました。
これに対しては、同時に作業ができるようにする、手や歩く距離を短くする、などの改善案を考えて実施しました。
悪戦苦闘しながら、1ヶ月程度で目標達成できました。

すると、面白い現象が発生しました。
今まで、寄り付かなかった人たちがセル生産ラインの周辺に集まるようになってきたのです。
誰でも、未知のものには近寄らないものです。
ひそかに成功を感じた瞬間でした。

このセル生産ラインは、その後もどんどんサイクルタイムが短縮できました。
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