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【11】多工程持ちとは? 
コンベアラインは非常に効率の良い方式なのですが、もっとも大きな欠点があります。
それは、人の能力の向上を止めてしまうことだったのです。
そのため、単純なコンベアラインは、ほぼ20世紀で消滅したと感じます。

コンベアの作業者は、「単能工」だったのです。
コンベアに限らず、機械も一人一台持ちが原点でした。
一人が一台の機械を担当して作業を行っていました。コンベアラインだと、一つの工程を担当していたのです。

高度成長の時代に、どんどん生産を拡大する時には、人も急増するため訓練が追い付かなくなりました。
多くの作業者が単能工なので、コンベアラインは有効だったのです。
さすがに、一人一台持ちでは効率が悪いので、一人で「多台持ち」になりました。
この場合は、同じ種類の機械を複数台を担当するということです。

工場のレイアウトも、同じタイプの機械を並べるジョブショップ型になります。
しかし、TPSでは生産の流れを重視しているので、工程の順に機械を並べて生産しています。
例えば、旋盤、フライス盤、ボール盤という感じで、フローショップ型といいます。

すると、作業者は旋盤もフライス盤もボール盤も使える必要があります。
これを「多工程持ち」といい、作業者は「多能工」でなければなりません。
加工に必要な複数の工程を、一人で仕上げるのです。セル生産ラインも、多能工でないと実現できません。

一つの工程や同じ機械で繰り返し、一つの作業を行う方が効率が良いと考えていました。
実際に測定を行っても、そのような結果が出ていました。これが、20世紀の錯覚だったのです。
多品種少量生産が要求されるようになると、単能工ばかりの機械加工やコンベアラインでは、生産効率が大きくダウンしたのです。

半信半疑で多工程持ちにすると、一瞬は生産性が低下したものの、逆転してしまったのです。
その要因は、人の能力の伸長と、作業を工夫する改善の結果だったのです。
色々な機械を使ったり、多くの工程を担当することにより、やりがい感と改善の可能性が高まりました。

単能工やコンベアでは決して味わえなかった「工夫すれば生産を増やすことができる」という達成感を感じることができるようになったのです。
複数の機械や工程を担当するようになって、作業にメリハリをつけることができるようになりました。
簡単な作業は早く、注意の必要な作業は丁寧にできるようになったのです。

さらに、1台の機械が加工している間に、他の機械へのワークの脱着ができるようになり、加工待ちのムダが激減することができました。
これは、複数の機械や工程を担当しなければ絶対にできなかったのです。
ほとんどの工場では、バブル崩壊後に多能工化を推進していますが、トヨタは1960年代にスタートしているそうです。
実にスゴイことです。

多能工化を推進するためには、「多能工教育」が必須です。
毎日の生産を行いながらの多能工教育の推進は、綿密な計画が必要です。
はじめての作業をいくつも経験することになるので、必ず生産性がダウンするためです。
「多能工マップ」というスキルの星取り表、兼、スキル育成計画表を作成して、じっくり取り組むことが重要です。

現在のように、人材のフロー化が進んでいる工場では、細心の注意が必要です。
全ての人材を多能工化することは限界があるため、多能工と単能工の複線化が必要だと感じます。
工場に合った多能工化教育のプログラムを立案、実施することが重要なのです。
     
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