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誰にも聞けない「トヨタ生産方式」現場改善コーチが伝授します
【10】一個流れとは? 
「一個流し」という言葉はよく聞くけど、「一個流れ」は聞いたことがない方が多いと思います。
実は、TPSでは「一個流れ」といいます。
自動車を5台も10台も一気に作れないので、コンベアに1台ずつ流します。
一台ずつ、自動車が流れているのが普通なので、このように「一個流れ」と呼ぶのだと思います。

そのため「一個流れ」の真の意味は、仕様の違う自動車、つまり、全工数の違う自動車も同じ作業時間で生産することを指します。
トヨタの組立ラインでは、売れ方に合わせたモノづくりをしているため、1台1台が異なった車種や色、仕様の自動車を流しています。
これを「平準化生産」といいますが、色々な車種を同じサイクルタイムで生産を行っているという意味です。
小型車ですと60秒ぐらいで、1工程を完了させています。

それに対して、「一個流し」は積極的に一個ずつ投入して生産をすることを言います。
ほとんどの工場では、この「一個流し」の方がメリットがあります。
一般的に、「一個ずつ生産」は無理なので、ロット生産、つまり、まとめ生産を行っています。
なぜ、まとめ生産が良くないのでしょうか?

5台の受注に対して、最小ロットが50台ですと、45台のつくりすぎのムダを生んでしまうからです。
毎月、受注があって、必ずこの45台がなくなる場合は構わないのです。
しかし、そのまま売れ残ってしまうと、最悪、廃棄ロスになってしまいます。

このケースでは、1個ずつ5回生産するのが理想ですが、できる限り最小ロットを小さく出来ればロスが少なくできます。
「一個流し」は、絶対に1個ずつつくるのではなく、その製品で考えられる、もっとも小さなロットサイズで生産することです。
このケースだと、1ロットを5個として生産できれば、1個流しできていると判断できます。
小ロット化は、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

メリットは2つです。一つは、小ロットの方が早く生産できるということです。
つまり、生産リードタイムが短いということです。早くお客様に届けることができます。
もう一つは、製品在庫や仕掛在庫が少なくなります。不移動在庫や廃棄ロスを減らすことにつながります。

最大のデメリットは、切替回数が増えることです。
先ほどの例の、最小ロットを50台から5台にすると、切替回数は10倍になります。
もし、1回の切替に1時間かかっていたら、10時間もの切替ロスが発生してしまいます。
これは、とんでもないことです。

しかし、ひと昔前のように切替回数を少なくするために、まとめ生産の生産計画を立てるのは、現在では命取りになってしまいます。
さすがにトヨタでは、まとめ生産を行っているプレスや塗装工程でも、最小ロットサイズを小さくする取り組みを、戦後直後から行っています。
つまり、段取時間の短縮の活動を、70年間も継続的に行っているのです。

プレス工程の段取時間は、戦後直後は3時間だったものが、現在では3分だそうです。
トヨタでは、「段取時間のシングル化」を目標にしています。
「シングル段取」とは分の単位がシングル、つまり、何分のレベルです。つまり10分未満を指します。

段取改善は難しいしお金もかかるので逃げがちですが、トヨタは真正面から継続的に改善と投資を行ってきたそうです。
今からでも遅くありません。1個流しの考え方を導入して、どこまでロットサイズを小さくできるか真剣に検討するのことが重要です。
必ず切替回数が増えるので、切替作業にもメスを入れ、地道に改善を行うことが必要です。

簡単には出来ないのですが、継続的に行うことで、ものづくりの基礎体力が確実に強くなります。
多品種少量生産なのですから、指標を一日何台生産できたから、一日何機種の生産が出来たかに変えるべきです。
     
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