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【6】省人化から少人化とは? 
「省人化」とは、現状よりも人を減らすことをいいます。
ライン作業の改善を行い、0.5人の工数を削減できた、などと言います。
果たして、本当に効果が出ているのでしょうか?

0.5人の削減とは、実際には1人は抜けないのです。そのため、経営効果は出ません。
さらに、コンベアラインだと、ボトルネック工程以外の工数低減は、効果になりません。
ライン全体の人数が減らない限り、実際の効果を出せないのです。

それに対して、TPSの「少人化」は、大きく意味が異なります。
省の下の目がないので、「目のない少人化」と呼ぶこともあります。
ひと言で言うと、ラインの定員を無くすことを指します。

高度成長時代、ライン作業が飛躍的に発展しました。
どんどん作業を改善を行い、サイクルタイムを短くしていきました。
在職中、改善が進んだ工場で、20人のラインなのにサイクルタイムが6秒を切るコンベアラインがありました。

6秒のサイクルタイムとは、材料を取り損なっただけでバランスが10%程度も変動する、ライン作業としては究極の速さだと思います。
もちろん、20人の定員制のラインで、19人にも21人も出来ません。
作業者の欠勤のため、全ての作業ができるラインリーダーが必ず必要でした。

このスーパーコンベアラインは、多品種少量生産には全く対応できず、21世紀には消えていきました。
この定員制ラインが、時代の変化に対応できなかったのです。
大量から少量にニーズが変わった時に、定員のないラインに変えるべきだったのです。

この定員をなくすことを、TPSでは「少人化」と言うのです。
生産数が多い時は5人で、少なくなったら3人で生産できるということです。
これを実現するのは、非常に大変です。コンベアラインの発想では出来ません。

現状の作業を分析して作業改善を行うレベルでは、全く実現することができないのです。
最初から、例えば「1~5人で生産を行う」ことを目標にして、生産方式を考えないと出来ません。
さらに、一人一人の作業が変わるので、全ての作業者が全ての作業が出来ることが前提になります。

これが「多能工」です。多能工を実現するために、二つの方法があります。
一つは、しっかりした計画に基づいた「多能工教育」を行い、全ての作業ができる多能工を育成する方法です。
もう一つは、作業を簡単にして、誰でも作業が出来るようにすることです。
例えば、作業をワークの脱着だけにして、加工は機械にさせる方法です。

組立での少人化の代表事例が「セル生産ライン」です。
必要数に合わせて作業者数を可変できるラインのことです。
セル生産ラインは、スキルを持った多能工が必要であるため、現在では運用が難しくなっています。

この「少人化」の目的は、作りすぎのムダを出さないことです。
売れるだけの人員で生産を行えるように、ものづくりをフレキシブルにすることです。

タクトタイムと共に、現在のものづくりには、非常に重要な考え方なのです。
     
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